覚えてる。

見知らぬ土地なのに。

まるで映画の1シーンのように
私の心の中には鮮明に、焼きついているんだ。


今年最後の出勤日。

私は事務所内の掃除をしながら
toとずいぶん長い時間メッセンジャーをしていた。

私が東京で働いていたとき、
私はtoと一緒に営業にでかけることが何度かあった。

その時話したことを、今でもちゃんと覚えている。
toも、覚えていてくれる。

それが、嬉しかった。


toは私のことを、
"話をむっちゃ真剣に聞く子やなーって思った"って。
そして、
"相手の目をまっすぐにじっとみつめる子やなーって思った"って。
そう教えてくれた。

私はtoと話すと、toの話に集中してしまうんだ。
彼の話に吸い込まれていくって言う表現が正しいのかも。



私は何度もtoの言葉にドキっとしている。

そのドキっとした瞬間に、
そのときの場面と風景が鮮明に記憶される。


彼も私もタバコは吸わない。
タバコの煙とニオイが苦手なのも、同じ。

そんな話をしていたときに。

「どれだけキレイで性格のいい子でも、
 タバコ吸う子とはつき合えへん。
 ぎゅってしたときに、タバコ臭かったら
 だめだーって思うねん」

たぶん私が一番初めにtoにドキってした瞬間。

「ぎゅってした…」と言った瞬間、
私はtoに抱きしめられることを想像した。

たぶん、その瞬間に恋に落ちた…(笑)

私はその場所がどこだったのか覚えている。


電車の中ぐらっと揺れたときに、
私を支えようと差し出してくれた手や。

すっごくやさしい表情で私のことをみてくれた瞬間。

車道を歩いていて、車がすぐ近くを通りすぎそうになったとき、
危ないって背中に手が触れて、彼の方に引き寄せられたときの感覚。

全部、覚えてる。

心がときめいた、瞬間。

覚えてるよ。


私は今、営業チームの管理者をしていて
クライアントにも、本社の人たちにも
「若いのにしっかりしてる」ってよく言われる。

自分でもしっかりしてる方だと思う。

でも、実は結構抜けている。

仕事でミスをすることはほとんどないけど、
常識として知ってて当然のことを知らなかったりする。

あとはテレビを全く観ないので、
芸能人やお笑いタレントやネタなんかを本当に知らない。

だから、びっくりされることがよくある。


toはね、そんなところが私のいいところだよって言ってくれる。

実は抜けてることが?!

知らないことがいっぱいあることが?!


私のことをそんなふうに褒めてくれるのは、toしかいない。


気が利くとか。
仕事が早いとか。
品があるとか。
そう言って褒められることがある。

でもね、それって「意識して」そうしてる私なの。

気を利かせてるの。
効率よく仕事をこなそうと頭使ってるの。
身のこなしや表情はずっとそう意識して訓練してたの、
だから今はそれほど意識しなくても身についているだけ。

全部ね、意識が働いてるの。


私にとってtoのその言葉は、
他のどの褒め言葉よりも特別だった。

物をしらなくて、恥ずかしい…
そう言った私に
「それがいいところだよ」って言ってくれたんだ。

「冗談じゃなくて、ずっとそう思ってた」って。


ねぇ、そんな褒め方ってある?

そんな不意打ち、あり?

「知らないこと」「抜けてるところ」そんなの意識してないよ。
意識できないからこそ、
知らなくて恥ずかしい思いをしたり
抜けてる自分に自己嫌悪したりする。

無くしたい部分だったのに。

それが私のいいところ?


かなわない。

toには絶対、かなわない。


私はまた自分のことを好きになれた。


完璧な人なんていないけど。

みんな完璧になりたがっているように思う。

就職活動のときの面接みたいに。

私はこんなことができます!
私の強みはコレです!
私はこんなことをがんばりました!
私の長所はコレです!

みんないいところをアピールする。

私も、
「短所は人に気を遣いすぎて、
 相手にかえって気を遣わせてしまうことです♪」
なんて短所すらも長所のようにしゃべってた(笑)

そうやって欠点はなるべくみせないように。
いいところを全面に出して、人に好かれようとする。

(…そんなに極端なのは私だけ?)

自分のことは他人に少しでもよく思ってもらいたい。


だけど、ふと自分の周りの人のことを考えてみる。

何でも完璧にこなす、
パーフェクトな人がもしも存在したら。

男であれ女であれ、
私はその人を好きになるだろうか?と。

そんな人がいたら、きっと気味が悪いよ。

ダメなことろがあるから、親しみもわく。
血の通った人間らしい人だって、思う。


それなのにね。

自分は完璧な人になりたいなんて。

おかしいよね。

人が完璧だったら気味悪がるくせに、
自分は完璧でいたいなんてさ。

矛盾してる。


私ね、toの前では本当に素直なんだ。

知らないことを知らないと言える。
飾る必要もないと思う。
そのままの私でいればいいって思う。

toがね、そう思わせてくれるの。

彼にはそれだけの包容力がある。

私が素直になれるのは、私の力じゃない。
彼の力。

私はただ、彼の器の大きさを知ってるだけ。

無知な私でも、
飾らない私でも。
彼にとっては許容範囲内なんだ。

それって彼の器がすごく大きいってこと。

器が小さい人は、
人を受け入れることができないんだよ。

自分と違うものはNO!
自分よりも優れているものもNO!
自分が知らないものもNO!

恐いのかな。
器の小さい人は多くを、拒絶する。

そんな人の前で素直になんて私はなれない。
私もまた、拒絶されることが恐いから。


私はね、toには絶対かなわないよ。
もともと勝負になんてなってないんだけどね。

だけど私は決して自信を失わない。

どうしてか、わかる?

私はtoの器の大きさを知るたびに、自信が増す。

どうしてか?


気づけたから。

うん、toがね、
それだけ素晴らしい人なんだって気づけたからだよ。

目には見えない、
その人が持つ世界観であったり、その人の器の大きさ。

私はそれに気づけた。

私の中にはtoのように大きな器は、ない。

でも、私は気づけたから。

私にしか見えないものが見える。

「toをすごい!って思える私もすごい!」

簡単に言うと、そう言うこと(笑)


きっと私には今の距離がちょうどいい。

心はいつでも近くにある。
それがなによりも、幸せだと思う。


もしも距離が近かったら。

私は、溺れる。

思考を停止させる。

彼のことしかみえなくなる。


メッセンジャーの最後に、
「今年、出会えて良かった」
私はtoにそう伝えた。

本当に。
私は今年、toに出会えて良かった。


ありがとう。

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